製品事業部 CAD セグメント シニアアプリケーションスペシャリスト
超音波洗浄機、液晶製造装置等の機械設計を 2D & 3D 共に経験し1997 年に入社。機械設計分野以外に樹脂・板金金型、CAM の担当エンジニア。
今回は、Creo Parametric の CAM 機能の概要、HSM CAM のメリットと活用方法について解説します。記事の最後で Creo のお客様導入事例もご紹介しておりますので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
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CAD CAM とは、CAD(Computer Aided Design)と CAM(Computer Aided Manufacturing)を組み合わせた概念であり、設計から製造までのプロセスを統合する技術を指します。
Creo は、設計から製造までの一貫したプロセスを支援する強力な CAD CAM ソリューションを提供しています。特に、CAM 機能では、設計変更の影響をリアルタイムで反映できるアソシエイティブ機能が特徴です。
2022 年 12 月時点で販売されている Creoの「Design パッケージ」全てに CAM 機能が含まれています。
ただし、Creo Design Essentials の ”CAM Lite” はポストプロセッサーが含まれていません。このパッケージの場合、NC データへ変換するためには他社製ポストプロセッサーを使い Creo から出力した CL データを利用して NC データ出力をします。
もちろん、Creo CAM Lite 以外の各拡張機能(Ext. と名付けてある)は単体購入も可能です。
ご要望に応じてお得な Design パッケージと共に利用できます。
次は、Creo の CAM 機能で何ができるかについて言及します。
これら各々は、前述した拡張機能によって可能な加工方法が異なります。
下図をご覧ください。
※Creo の板金 CAM“Creo NC Sheetmetal Extension” は上図に非掲載。
やりたい加工方法や軸数に応じて、拡張機能を選択します。High Speed Milling Extension 以外は、高位の拡張機能が下位の拡張機能を含んでいます。
箇条書きをした Creo NC ができることですが、ミリング加工では一般的に必要な加工パスタイプ、例えば平面加工、面沿い加工、プロファイル加工などのタイプの他に、穴明け加工では固定サイクルと独自のサイクル作成も行えます。
一般的な CAM のプログラムが行えるだけでなく、「設計製造密連携」を行えます。標準的な加工パスを作成して製造情報として保存し(XML 形式)、設計部品内にその製造情報を埋込みます。CAM アセンブリにおいて埋込まれた情報を取り出すことで半自動的なプログラミングが可能です。 設計から製造までの DX を行うために、部署間で利用できる製品情報(3D モデル)にデジタル情報を埋込むことでリーンな(無駄が無い状態や無駄をなくすこと)ものづくりを行うことができます。
HSM(High Speed Machining)とは、高速加工技術を指します。特に、精密加工や金型加工で重要な役割を果たし、以下のような特徴があります。
HSM CAM の導入により、加工時間の短縮、工具寿命の延長、表面仕上げの向上が期待できます。
工作機械の上記能力だけでなく、機械全体の剛性と構造、位置フィードバック制御、熱補正、動作制御システム、刃具の保持方法などその他の多くの特性を詳細に調べる必要があります。*1
従来は焼き入れ材や高硬度材料の加工において、型掘り放電加工を用いていました。型掘り放電加工は非常に効果的でかつ現在でも多く用いられている加工方法ですが、放電電極(材質は銅合金の銅-タングステン合金、銀-タングステン合金、銅、黄銅や銅-グラファイト、グラファイトなど)の設計と電極の加工、放電加工機による型の加工が必要です。そのため、リードタイムをより短縮するためには、放電加工における製造工程期間を短縮することの限界やより革新的に早く効率的に生産する方法を探す必要がありました。(著者注:決して放電加工を否定する意図はありませんし、細く深い溝などはとても有効な加工方法です。ただし、高速加工でこの部分も対応可能です)
ここで鍵となるのが切削工具と CAD/CAM ソフトウェアです。切削工具について記述する前に CAD/CAM ソフトウェアから言及します。CAD/CAM ソフトウェアの進化によって高速加工に適した新しいツールパス生成を利用できることで CAM システムの利用が加速しました。当初、高速加工は金型業界に焦点を当てられていましたが、現在では広範に利用されており、薄肉形状部がある加工においても非常に効果的です。もちろん工作機械自体は堅牢で前述したような高速加工に必要な設備や構造を備えている必要がありますが、CAM によって生成される加工パスが最大の鍵となっています。一貫した工具の切削負荷で加工パスを生成する機能は、特にコーナー部において高負荷になります。そのため、小径の刃具であっても、従来の限界を超えた条件で加工を行うことも可能です。*2
なお、従来のフライス加工と高速加工の違いですが、一刃あたりの切削量の違いが大きいことです。「刃物とワークの接触時間が長く発熱して熱応力を持ち切削抵抗が大きい」「刃物の冷却がより多く必要」「精度低下」など精度を求める加工では、従来の加工プロセスだと条件が悪くなります。また加工パスの軌跡自体も単純な動きでした。そのため、刃具の材質やコーティングが発達してきましたが、工具寿命を考慮してコーナー部での減速が必要ですし、クーラントも必要です。高速加工による工具寿命よりも短くなってしまいます。
直線動作 (G01) で加工する方が、精度よくより高速で加工できますし、工作機械の駆動機構によっては円弧やトロコイド加工でも高応答性と工作機械への負荷を下げることも可能です。 切削を直接担っている工具(刃具)も、とても重要な鍵です。
切削工具は、工具や保持方法が従来の加工と異なるものを用いることでより高い送り速度と主軸回転数により高速加工を実現できます。そのため、仕上げの面粗度が良く磨きレスも実現でき、切削による発熱を抑えられることから加工歪みを抑え、焼き入れ材の加工も可能です。
特徴的なことは
です。
高速加工に用いる工具で必要なことは、専用の工具、突き出しを短く、焼き嵌め工具を使う、オイルミスト、エアやクーラントによって迅速に切粉を排出することです。
Creo の HSM CAM 拡張機能として「Creo High Speed Milling Extension」と「Creo High Speed Milling Advanced」が提供されています。これらのソリューションは、ドイツのソフトウェアメーカ Moduleworks 社の CAM エンジンを採用しており、高精度なツールパス生成が可能です。
Creo の HSM CAM 機能を活用することで、金型や精密部品の製造における高い生産性を実現できます。
Creo の CAM は、設計と製造をシームレスに統合し、HSM CAM にも対応した強力なソリューションです。
以下に Creo を活用して設計業務を最適化した企業の導入事例を紹介しますので、こちらもぜひご覧ください。
【導入事例】
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*1:High speed machining of magnesium and its alloys
*2:PEAK MACHINE SALES, “What is High Speed Machining?”(高速加工の歴史についても触れられているので是非ご一読ください)